看護師は転職者が多い職業です。
一般企業では3年置きに転職をしている人がいると、「辛抱が足りない」「飽きっぽい」「ふらふらしている」という印象を与えますが、看護師は働く環境によって学べることに違いがあり、「勉強熱心」や「向上心がある」という印象になることもあるのです。
ですが、転職の理由はポジティブな理由ばかりではありませんよね。
転職先に本音の理由を伝えるべきか、建前の理由を伝えるべきか迷うこともあると思います。
あなたが転職をしようとしている理由は、どちらが良いでしょうか。
ここでは、転職理由をどう伝えるべきかについて書いてあります。最後まで読み進めながら検討していきましょう。
目次
看護師の離職理由
厚生労働省調べによる看護師の離職理由の順位は、次のような結果になっています。
- 1位 出産・育児のため
- 2位 結婚のため
- 3位 他施設への興味
- 4位 人間関係が良くない
- 5位 通勤が困難なため
結婚や育児の場合は、ライフスタイルの変化により、働き方も変えなくてはいけない、仕事との両立が難しいという理由があるため、退職する人も多いですね。
しかし3位以下の場合は、転職で解決できることもあるため、辞めるではなく退職して転職する人も多いと想像することができます。
6位以下に僅差で、休みが取れにくい、残業が多い、夜勤の負担が強いという理由が並んでいます。
では離職や転職を考えずに働き続けている看護師はどのような理由で辞めないのでしょうか。
こちらも厚生労働省のデータがありますのでご紹介しますね。
- 1位 勤務形態が希望通りである
- 2位 通勤の利便性が良い
- 3位 雇用形態が希望通り
- 4位 同僚との関係が良い
- 5位 残業が少ない
離職理由にある「人間関係」と「通勤困難」に関連する項目が辞めない理由にも入っていますね。
やはりこの理由は、辞めるか辞めないかの理由として大きなウェイトを占めていると考えられます。
看護師が今の職場を辞めたいと思う理由は、ライフスタイルの変化を除けば、他施設への興味とより良い環境を求めてということが言えますね。
転職面接で転職理由を聞かれるワケ
転職で必ず悩むのは転職理由ではないでしょうか。
これは退職の理由にも関わってくることですから、辞める職場にも転職先でも伝えることになります。
転職時の面接では必ずと言っていいほど、この理由は聞かれます。
なぜ聞かれるのでしょうか。
それには2つの理由があります。
転職先に合っているかをチェックするため
面接官は自分の病院に馴染める人かどうかを見ています。
不平不満を感じさせるような理由の場合は、採用してもトラブルになるのではないかと感じられてしまいます。
転職理由そのものもそうですが、話している表情も良く見ており、この病院に合っている看護師なのかどうかをチェックしています。
長く働いてくれる人か確認するため
採用する方としては長く働いてくれる看護師を求めています。
ですから転職理由から長く働く気持ちがあるか、やる気があるかなどを見ています。
何度も転職を繰り返している人や、あまりにも個人的な転職理由の場合は、すぐに辞めてしまうかもいう懸念を抱かせてしまいます。
正直に伝えて良い転職理由
転職理由はほとんどの看護師が脚色しているのですが、本当の理由を正直に伝えた方が良い場合もあります。
それは、前向きな理由の時です。
具体的な例を2つご紹介します。
1 キャリアアップを目指したい
看護師として働いて行く中でもっと積極的に専門的に患者さんと関わりたいと思い始めた。
どのような勉強をすると自分が理想とするケアができるのかを考えた時、今関わっている分野にはこれからも携わって行きたいと思い、この分野の専門看護師の資格取得を目指そうと思った。
しかし今の職場は、資格取得のための研修に参加することが難しい。
諦めたくはないため、資格取得の支援体制が整っている病院に転職しようと考えた。
2 新しい分野に挑戦したい
長く慢性期の患者さんと関わってきたが、退院してもまた入院する患者さんが多く、家で過ごし時間を長くすることはできないかと考えるようになった。
病棟で働いていると退院後の姿を具体的に想像することが難しいと感じていた。
そして在宅ケアに興味を持ち、今度は病院とは違った視点で患者さんのケアを行い、自宅で過ごすお手伝いがしたいと思うようになった。
これらのことから、在宅ケアに力を入れている病院に転職を決めた。
2つのケースはポジティブな思いがあり、今の職場ではそれが実現できないため転職をするのです。
これらの理由は正直に伝えることで、やる気や誠実さをアピールすることにもなりますし、向上心のある看護師だと好印象になります。
ここでのポイントは、今の職場には不満がないというところになります。
そして、自分がやりたいことや目標、夢が明確にあるということです。
明確なものを伝えることで、転職先の人にも自分が働いている姿を想像してもらいやすくなります。
一生懸命楽しそうに働いている姿がイメージできると、採用したくなるものですよ。
ネガティブな理由は表現を変える
では問題なのは、ネガティブな理由で転職をする場合、どこまでどのように伝えるかですよね。
離職理由で多かった、「人間関係の悩み」「休みが取りにくい」「残業が多い」を例に考えてみましょう。
人間関係の悩みがあり転職をする場合
ケース1 先輩からのいじめに耐えられず転職
無視される、制服を隠される、個人で買ったハサミや聴診器を壊される、医師からの指示を伝えてもらえない、自分だけ時間内に終わらない仕事量を押し付けられるというようなことが毎日ある。
この状態が1年以上続いており、一度上司に相談をしてそれとなく注意をしてもらったら、表向きは改善されたが陰でさらにいじめが悪化してきた。
仕事に行くのが辛く看護師を辞めたくなったが、好きな仕事なので転職をして続けようと思った。
いじめの場合は本人にも問題ありの可能性を疑われてしまいます。
できれば言わずに他の理由で伝える方が良いのですが、他の理由が浮かばない場合は、「人間関係を理由に辞める看護師が多い職場だった。最初は馴染むように努力をしてきたが、そのことに意識が行き過ぎてしまうようになってしまった。このままでは看護師の仕事に集中できにないと感じるようになり転職をすることにした」というようにすると良いでしょう。
ケース2 上司(経営者)と仕事に対する意見が違う
そのことで上司や経営者と対立することが多くなり、他の職員からも浮くようになり職場に居づらくなった。
上司や経営者と合わない場合は、看護観の違いというところを出すと良いでしょう。
学生時代、新人、経験5年、10年では看護観は変わります。
そのこと自体は不自然ではありませんので、自分の看護観を明確に説明し、転職先の経営理念や看護観と一致しているということをアピールすると良いですよ。
休みが取りにくい
ケース1 子供の行事に休みがもらえない
同僚は同じくらいの年の人が多く、休み希望が重なることも多く、希望通りの休みがもらえず子供の行事に参加できない。
子供にさみしい思いをさせたくないので、休みが取れるところに転職したい。
この場合は、ライフスタイルの変化を強調すると良いですね。
休みがもらえないというと個人的な感情になりますので、子供の成長と共に働き方を変える必要が出てきたというような表現です。
こちらの病院は自分より経験年数がある看護師が多く、先輩方に子育てと仕事の両立のアドバイスをもらいながら働けると思ったというような理由も良いですね。
ケース2 有給休暇が取れずストレス解消できない
有給休暇を使って年に1回は海外旅行をしており、国内旅行も1泊で何度も行っている。
しかしこの2年ほど看護師不足を理由に有給休暇希望を却下されることも多くなり、海外旅行はもちろんのこと国内旅行も行けないことが多くなった。
当然の権利がもらえないのであれば、働く楽しみも減るので転職を考えた。
完全に個人的な理由ですよね。
ですから、あまり全面的には出さずに、他の病院に興味を持ったなどの他の理由を伝える方が良いですよ。
有給休暇を取りたいです!というアピールをするのであれば、仕事とプライベートのメリハリをつけて働きたいということをソフトに伝える程度なら大丈夫です。
残業が多い
1 毎日残業があり疲れが取れない
時間内に仕事が終わった時は、サマリー作成や研究発表の準備などのために残業をしなければならない状況。
毎日遅くまで仕事をしているため、家に帰っても何もする気になれず、疲れも取れにくくなっている。
残業のないところに転職したい。
残業が多いと患者さんひとりひとりと向き合うことが難しくなりますよね。
その辺りのことを理由に挙げると良いですよ。
もっと患者さんに寄り添った看護がしたい、より丁寧なケアをしたいというような理由を前面に出すことで、良い印象になります。
本来の転職理由とは離れてしまいますが、この場合は仕方がないですね。
ケース2 サービス残業が多い
がんばって仕事をしているのに、正当に評価されていないような気がしてモチベーションが上がらない。
このままではやりがいもなくしてしまいそうなので転職を考えたい。
残業をしても何らかの評価が伴っていれば、がんばれることもありますよね。
この場合は、残業時間が少ない、残業代が支払われる病院を探して転職すると思います。
ですから、働き方が自分に合っているというところを強調すると良いですよ。
具体的に残業時間や福利厚生が厚く、安心して働けると感じたというように伝えるのも良いでしょう。
転職面接ではやる気と誠実さをアピール
転職理由には本音と建前があります。
すべて建前だらけにする必要はなく、ポジティブな理由や、引っ越しや家族の転勤などの仕方のない理由の場合はそのまま伝えても大丈夫です。
ネガティブな場合は、必ずポジティブな理由や言葉に変換することができますので、あまりかけ離れた理由を取ってつけるのではなく、よく検討してみましょう。
採用する側は、やる気があって長く働いてくれる人材を求めています。
そこを上手にアピールできるような理由を考えましょう。